研究活動

RESEARCH ACTIVITIES

RESEARCHERS GROUP

比抵抗構造探査と電磁気観測

グループメンバー

教授
上嶋 誠
特任研究員
畑 真紀
関連研究者
小河 勉(観測開発基盤センター)、小山 崇夫(火山噴火予知センター)

電気比抵抗は,温度,水・メルトなど間隙高電気伝導度物質の存在とそのつながり方,化学組成に敏感な物理量である.これらの岩石の物理的性質は,すべて,その変形・流動特性を規定する重要なファクターであり,比抵抗構造と地震学的諸情報をあわせることで,より詳細かつ正確な情報を抽出し得る.従って,当センターは内外の研究者と協力して,震源域や火山地域スケールおよび列島スケールや周辺大陸縁辺域の比抵抗構造を解明するプロジェクトにおいて,観測法やインヴァージョン手法の開発を含め,中心的な役割を担ってきた(火山噴火予知研究センター,海半球研究センター,観測開発基盤センターとの共同研究).

2010年7月に草津白根山周辺域で実施した広帯域MT観測より。(induction coil<Metronix社MFS07e>埋設と方向づけ)

2011年度には、1) 東北背弧歪集中域(庄内平野-新庄・山形盆地周辺域、村上-相馬測線)広帯域MT法補充観測、2) 東北太平洋沖地震によって顕著な誘発地震活動が起きた、富士山周辺域、いわき周辺域における広帯域MT法観測、3) 濃尾地震断層周辺での広域的ネットワークMT観測、4) 中国東北地方におけるGDS観測、5)既存の電磁気データの解析、6) 比抵抗構造インヴァージョン手法の開発、7) 伊豆大島、三宅島、桜島、霧島、富士の火山や地殻活動に関連する特異な電磁場、比抵抗変化の調査、8) 伊豆半島東部、東海地方における地殻活動に関連する電磁気現象の調査、等の研究を実施した。

これら一連の研究の主たる成果として、東北太平洋沖地震直後に誘発地震が起こった村上-相馬測線近傍の蔵王周辺域でマントルからつながる低比抵抗域が見出され、誘発地震発生に地下深部から供給された流体が関与した可能性が指摘された。紀伊半島北西部の和歌山県有田川非火山性微動発生域の直下にも低比抵抗域が見出され、東北太平洋沖地震の4ヶ月後に起こった、この地域ではまれなM5クラスの地震も、その低比抵抗の上側、高比抵抗域の中で発生し、これらの地震活動にも流体の存在や移動が関与した可能性が指摘された。また、霧島新燃岳周辺域での全磁力観測データに、2011年新燃岳噴火に1年先行する全磁力変動を見出し、GPS観測により同じく噴火1年前から見出されていた新燃岳の北西の地下深部を中心とする山体膨張に呼応して、新燃岳西南西地下浅部で熱消磁が進行していた可能性を指摘した。このほか、データスペースでの3次元ネットワークMT法・広帯域MT法インヴァージョンコードを実データに適用して北海道東部地域、九州地方、中越地震域や跡津川断層域で3次元イメージを明らかにしたほか、位相テンソルを逆解析する3次元比抵抗インヴァージョン手法を確立した。

有田非火山性微小地震発生域における広帯域MT法観測点分布。2009年7月から8月にかけて観測を実施した。あわせて2004年11月から2005年11月にかけての気象庁一元化震源分布を示す。本観測域は、直流電車路線(赤太線)、直流高圧送電線(橙太線)、交流高圧送電線(赤細線)が縦横に走る地域であったため、1点につき1ヶ月の観測期間をとるように努めた。

2014年度には,表層の不均質に影響されない位相テンソルと磁場変換数を用いた3次元比抵抗インヴァージョンコードを開発し,同コードを用いていわき誘発地震周辺域における3次元構造を明らかにしたほか,より精密な構造決定を目指して九州地方におけるネットワークMT,磁場変換関数,MT観測データのコンパイルを行った.また,来年度に開始を予定している,いわきから越後平野に至るMT観測,四国西部でのネットワークMT観測への準備を行った.

2018年には,昨年度に引き続き,2015年から観測を実施しているいわき地方から新潟平野に至る測線での広帯域MT観測データの解析や予察的な2次元解析を継続した.また,従来用いられてこなかった観測点間の磁場水平成分同士の周波数応答解析を試み,2次元解析結果をあわせて,その応答関数の構造決定における有用性を調べた.また,阿蘇火山を取り囲む九州中部の広い領域での広帯域MT観測データやネットワークMT観測データのコンパイルを進め,3次元解析から地域の3次元的構造の特徴の抽出を図った.地殻内の地震活動域と得られた構造との比較から,上記のそれぞれの地域において,従来から指摘されてきたように,地震発生域は相対的に高比抵抗域に分布し,その下部や側方に低比抵抗域が分布する様子が捉えられた.また阿蘇火山へのマグマ供給系を示すと考えられる低比抵抗帯が検知された.また,2016年度に実施していたえびの高原硫黄山周辺域における広帯域MT観測データから地域の3次元構造を求め,硫黄山の火山活動との関連性を調べた.一方で,硫黄山での観測開始直後に2016年4月熊本地震が発生したため,その前震,本震,余震からの地震波の到達に伴う電磁場変動の時空間分布の特徴の検出に努めた.一方で,大陸縁辺域スケールの大規模深部構造を求めることを目標として,中国全域にわたる3成分磁力計網のデータのコンパイルと解析を実施した.

2018年に実施,継続した観測として,まず,2018年9月に発生した北海道胆振東部地震震源域における13観測点における広帯域MT法観測があげられる(2018年10月から11月にかけて実施,北海道大学・名古屋大学との共同研究).同地域周辺域では,北海道大学を中心として,過去に精力的に広帯域MT観測が実施されていたため,そのデータのコンパイルも進めた.また,2015年に観測を開始した,新潟県阿賀野市から福島県鮫川村に至る地域において,データに問題が認められた3観測点において広帯域MT法補充観測を行った(2018年11月から12月にかけて実施).一方,豊後水道スロースリップ域やその北側に東西に分布する深部低周波微動域を含んだ広い領域での深部比抵抗構造を決定する目的と,スローイヴェント時の電磁気的シグナルの有無を検証するため,四国西部においてネットワークMT法連続観測を継続した(「スロー地震学プロジェクト:スロー地震発生領域周辺の地震学的・電磁気学的構造の解明」,および観測開発基盤センター「スロー地震学」プロジェクトを参照).

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