陸域機動地震観測

陸域機動地震観測

グループメンバー

【教授】
平田 直(センター長)、岩崎 貴哉(兼任)、
【准教授】
飯高 隆(兼任)、酒井 慎一(兼任)
【助教】
五十嵐 俊博、蔵下 英司、加藤 愛太郎(兼任)
【特任研究員】
PANAYOTOPOULOS Yannis(John)

(1) 内陸地震発生域における不均質構造と応力の蓄積・集中過程の解明

内陸地震の発生は,日本列島域周囲の海洋プレートの沈み込みなど,プレート運動に伴って生ずる歪が島弧地殻内部に蓄積し,それに伴い特定の断層への応力集中がおこり破壊に至るという一連のプロセスから成ると考えられる.地震予知研究センターでは,2011年東北地方太平洋沖地震にともなう地殻応答,濃尾地震の断層域,茨城県北部・福島県南東部の地震活動域,2014年長野県北部の地震の震源域,紀伊半島などで,その物理メカニズムを理解するために,島弧地殻・マントル内の不均質構造を解明するとともに,プレート境界から加わる歪・応力がその不均質構造や内部変形によって局在化していく過程を明らかにする研究を進めている.

(1-1) 2011年東北地方太平洋沖地震にともなう地殻応答

2011年東北地方太平洋沖地震の後,大きな余効変動が観測されており,それに伴い日本列島でも活発な地殻活動が観測されている.そのため,東北地方から関東地方にかけての地域において,地震観測,地殻変動観測,地球電磁気観測等,さまざまな分野にわたる総合観測を行い,東北日本弧の地殻・マントル構造を明らかにするとともにレオロジーモデルの構築を行い,観測データと得られたモデルに基づくシミュレーション結果との比較を通じて,今後の内陸地震や火山噴火の発生ポテンシャルの評価を目指す研究を行っている.地震観測において,今年度はいわき市から猪苗代湖にかけての50点の観測点の設置を目指し40点の観測点の設置を行い観測を開始した.今後は,電磁気観測や地殻変動観測の研究結果と合わせて考えることにより,得られた不均質構造の生成原因の推定を行うとともに,この地域における温度・流体量・岩石組成等についても情報が得られることが期待される.

(1-2) 濃尾地震の断層域における総合観測研究

東京大学地震研究所は,京都大学防災研究所をはじめとする全国の大学・関係機関と共同で,新潟-神戸歪集中帯の中に位置し1891年に発生した国内最大規模の内陸地震である濃尾地震の断層域を研究対象として,2009年度から2013年度までの5ヶ年計画で,地震観測,地球電磁気観測,GPS 観測等による地球物理学的総合観測を実施した.その観測で得られたデータを解析した結果,内陸地震の発生に関しては地表近傍の構造だけでなく,下部地殻の構造や地殻の下に沈み込んでいる海洋プレートから供給される流体が地震発生に大きく関係していることがわかってきた.さらに,2012年には全長約280 km の測線において地殻構造探査をおこなった.その結果,沈み込むフィリピン海プレートは,琵琶湖から根尾谷断層下で島弧地殻と約28㎞の深さで接する凸状の形状をした反射層として確認できる.この反射群に富む部分の島弧下部地殻のP波速度は低速度(6.3km/sec)で,沈み込むフィリピン海プレートと直接接触している.このように,この地域では沈み込むフィリピン海プレートが尾根状となって陸域の地殻に入り込んでいるなどの特異な構造をしていることがわかってきた.このような構造も地震の発生と大きく関係していることが明らかになった.

(1-3)茨城県北部・福島県南東部の地震活動と応力場の研究

2011年の東北地方太平洋沖地震により誘発された茨城県北部・福島県南東部の地震活動とその時空間発展を明らかにするために,約60点の臨時地震観測点を展開し維持している.その観測網によって得られた2011年7月から2014年2月までの震源分布とその断面を示す(図3.5.1).全体の震源分布の特徴としては,深さ15㎞-20㎞に水平に局在して分布する地震面がみられる.また,震源分布をW25S-E25N方向に断面を切りそれらを並べてみると,いくつかの特徴的な分布が見られる.南部は共役断層が発達していることがわかり,北部は複数の小さな断層面が別れて分布し,東西方向に浅くなるお椀型の分布を呈することがわかった.

(1-4)2014年11月22日長野県北部の地震(Mj6.7)震源域の稠密余震アレイ観測

2014年11月22日22時8分頃,長野県北部の深さ約5kmを震源とするマグニチュード6.7(MJMA6.7)の地震が発生した.この地震の余震域の西側には,糸魚川-静岡構造線の一部である神城断層の北部が位置しており,地表で確認されている活断層との関係を明らかにすることは,活断層の活動評価を行うにあたって重要である.また,高精度な余震分布や震源域付近の不均質構造は,地震発生様式を考える為に必要不可欠な情報である.そこで,3次元速度構造と余震分布を明らかにする目的で,余震域を含む領域に臨時地震観測点を約1km間隔で163箇所に設置し,独立型地震観測システム(GSX-3システム)を用いた稠密余震アレイ観測を実施した(図3.5.2).また,地表断層付近には,10-20m間隔でトラップ波等の観測のために64点の観測点を設置した.観測は,2014年12月3日から2014年12月21日まで実施した.取得データに対してトモグラフィ解析を実施し,3次元速度構造と余震分布を求めた.得られた余震分布からは,本震の震源付近で東傾斜の余震分布が確認できた.また,神城断層を横切るP波速度構造の東西鉛直断面図から,神城断層の深部延長に東傾斜の低速度領域が確認できた.

(2) プレート境界域における不均質構造と地震活動の解明

東北地方太平洋沖地震の発生後約9分後に、茨城県北部ではM5.7の地震が浅い地殻内で誘発された。この地震以降、正断層型のメカニズム解で特徴付けられる活発な地震活動が継続している。波形相互相関に基づく相対走時差データを用いて、2011年3月11日~31日に発生した地震の震源再決定をおこなった。その結果、多くの地震は西側に40~50度傾斜する複数の面上に分布することが示された。また、太平洋沖地震の発生前後の地震のメカニズム解を比較することで、深さ16~17 kmでは応力場の変化が起きていたことを明らかにした。太平洋沖地震が引き起こした伸張応力により、このような応力場の変化が生じたと考えられる。

(2-1) 紀伊半島北東部におけるプレート境界すべり現象メカニズム解明のための地下構造異常の抽出

スロースリップイベントや深部低周波微動等の多様なプレート間の滑り現象を規定する地下構造異常の抽出を目的とし,2015年度に深部低周波微動活動が明瞭な領域の紀伊半島北東部で稠密自然地震観測を実施する予定である.本年度は,その観測点配置を検討するために,紀伊半島北東部における既存地殻構造探査データ(Iwasaki et al., 2008)と定常観測点データを用いた地震波トモグラフィ解析を実施した.得られた紀伊半島北東部下のVp/Vs構造と震源分布(図3.5.3)からは,沈み込む海洋性地殻下の上部マントル内には,Moho面と平行な北傾斜の震源分布を確認でき,その近傍でVp/Vs値が大きくなる傾向が見られる.低周波地震波は,沈み込むフィリピン海プレートが島弧下のマントルウエッジと接する近傍で発生し,フィリピン海プレートのMoho面下に確認できる北傾斜の震源分布とフィリピン海プレート上面との間で活動度が高くなっている.これらのことから,プレート間の滑り現象を規定する地下構造の異常が,微動発生域やその近傍に存在することが推察される.以上の結果を受けて,2015年度の稠密自然地震観測は,微動発生域を含むプレートやマントルウエッジの詳細な構造を得ることができるように,微動発生域周辺で観測点間隔が密になる観測点配置で実施することにした.

 

 

 

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