「GPS気象学」へようこそ!
GPS観測では高度20000kmを飛翔するGPS衛星からの電波を地上で受信します.この際,大気があることにより電波の到達時刻 が真空中を進行する場合に比べ若干遅れます.電波が衛星から受信機まで進むのに要する時間を計測して衛星ー受信転換の距離に 換算すると真空と仮定した場合よりも距離は見かけ上長くなることになります.前記の遅れのことを遅延(delay)と称し,それを みかけの距離の増大量で表します.この大気の影響は乾燥大気(dry)の部分と水蒸気(wet)の部分にわかれます.前者の方が量 的には多い(2m程度)のですが,正確に補正できます.しかし,水蒸気の量は大気の状態が時空間的にheterogeneousになって いるので補正がたいへんむつかしいのです.GPSの解析では各観測点での天頂方向に換算した遅延量を数時間毎(地理院は3時 間毎)にパラメータ推定しています.地殻変動の立場からはこれを補正して正しい衛星ー受信点間距離に直すわけですが,「気象 学」の立場からはこの推定した遅延量からその時の可降水量がわかることになり,大変貴重な信号になります.  地理院が全国に1000点ものGPS観測点網を構築したことからこの可降水量分布が時々刻々わかることになり,天気予報(特に 雨量の予測)に大変役に立つことが期待されています.そこで来年度からこの地理院の3時間毎の天頂遅延量を気象予報に役立た せるためのプロジェクトが開始されることになっています.  下に示している図は平成8年9月29日〜10月5日の天頂遅延量の時間変化をアニメーションで示しているものです.この週は 太平洋岸を台風が通過し,浜松付近で集中豪雨のあったことが知られています.図はこの様子を見事に描き出しています(図中オ レンジ色は遅延量の多い(=水蒸気の多い)部分,青〜紫は少ない(=水蒸気の少ない)場所です.なお,海の部分はGPS観測 点がありませんからパターンは信用できません.